マンCを買収した資産100兆円のアブダビ王族。その裏にある国家戦略 (4ページ目)

  • ジェームス・モンターギュ●取材・文 text by James Montague 井川洋一●訳 translation by Yoichi Igawa

 ヒューマン・ライツ・ウォッチは、マンチェスター・シティの買収とCFGの安定した運営は「アブダビのイメージ回復の手段だ」と主張する。

「クラブを買って広告スペースを手にし、自分たちのブランドを広める。航空、旅行、建設などの企業が世界中に知られ、取材するプレスに対しても力を持つようになった。そしてアブダビの価値のいい面ばかりが語られ、人々の視線を逸らそうとしている。事態はよりひどくなっているというのに」

 ピッチ上の眩いばかりの結果により、シティのホームスタジアムであるエティハド・スタジアムは光り輝いている。シェイク・マンスールがクラブを買収して以降、プレミアリーグを3度制し、チャンピオンズリーグの常連になった。2017-2018シーズンのプレミア制覇で手にした賞金は約1億5000万ポンド(約215億1500万円)で、業績もうなぎのぼりだ。

 イメージ回復、利益、エゴ......。理由はどうあれ、シェイク・マンスールがマンチェスター・シティを買ったことにより、マンチェスターという街に世界的なクラブがもうひとつ増えたのは事実である。

 でも一体、いくら使ったって話?

■著者プロフィール■
ジェームス・モンターギュ

1979年生まれ。フットボール、政治、文化について精力的に取材と執筆を続けるイギリス人ジャーナリスト。米『ニューヨーク・タイムズ』紙、英『ワールドサッカー』誌、米『ブリーチャー・リポート』などに寄稿する。2015年に上梓した2冊目の著作『Thirty One Nil: On the Road With Football's Outsiders』は、同年のクロス・ブリティッシュ・スポーツブックイヤーで最優秀フットボールブック賞に選ばれた。そして2017年8月に『The Billionaires Club: The Unstoppable Rise of Football's Super-Rich Owners』を出版。日本語版(『億万長者サッカークラブ サッカー界を支配する狂気のマネーゲーム』田邊雅之訳 カンゼン)は今年4月にリリースされた。

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