強い後悔に駆られた夜に武藤嘉紀は決意。
「間違いは、もう犯さない」

  • 田嶋コウスケ●取材・文 text by Tajima Kosuke
  • photo by Getty Images

「今日は5バックでかなり守備的にいくということで、そこで使われなかった。自分も今日は先発でいくかなと思っていたんですけど、守備的なことに対して、たぶん信頼を得られていない。プレミアリーグで『こいつ守れるのか?』と信頼がなかったのだと思う。そこも、自分ならできるということをアピールしていかないと」と悔しがった。

 振り返れば、3年前にFC東京でプレーしていた武藤に対し、獲得オファーを出したのがチェルシーだった。英メディアのインタビューで武藤は、「チェルシーの監督が僕を本当に求め、必要としていると思えなかった。その代わり、成長するために自分のクラブに残りたかった。一歩一歩、成長していきたかったので、移籍を選ばなかった」と、オファーを断った経緯を明かしていた。

 そのチェルシーが相手だったことに、気持ちが高ぶることはあったのか――。意外にも武藤は「そんな昔の話は、とうに忘れてます」と、試合前に特別な思いに駆られることはなかったという。

 ただし、「(オファーをもらったときは)自分とのレベルの差が激し過ぎて、見ていて『すごいな』という感覚しかなかった。しかし今は、自分のモチベーションや心構えがしっかりできているので、見ていても恐怖心はないし、ここでやれるという自信しかない。それを結果で示さないといけないなと思っています」と、オファーを受け取った3年前との心境の変化を明かしていた。

 そんな武藤が、記者との質疑応答のなかでもっとも力を込めたのが、「8月29日に行われるリーグカップ、ノッティンガム・フォレスト戦で先発できそう?」との質問が飛んだときだった。記者団からそう尋ねられると、かぶせ気味に「じゃないと、まずいですよね」と即答。プレミアリーグ開幕から3試合連続でベンチスタートが続いているせいか、自分自身に言い聞かせるように言葉をつないだ。

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