乾貴士、デビュー戦完敗も、「自分が生きるポジション」をゲット (2ページ目)

  • 山本孔一●文 text by Yamamoto Koichi photo by Getty Images

 この日、ベティスの背番号8番が掴んだ一番のチャンスは89分だった。ジュニオール・フィルポがつないだボールに、エリア内でシュートを放った。W杯セネガル戦のゴールを再現するかのようなチャンスではあったが、レバンテのGKが必死のセービングを見せてゴールになることを許さず、乾のベティス第1号ゴールはお預けとなった。

 だが、乾のプレーはベティスサポーターの心を少しずつ掴み始めているようだ。ボールキープ力、正確なパス、積極的なチャレンジを見せると、スタンドからは何度も感嘆のどよめきがこぼれてきた。それは「日本人にしては、アジア人にしてはうまいな」というような偏見からきた第一印象である可能性もある。だが、何の力もない選手には興味を示すようなアクションを見せることはないはずだ。

「いや、(歓声は)あんまりわからなかった。ただ、得点に結びつければもっと喜んでもらえる。それを早くやりたいなと思っている」

 第3節にはセビージャとのセビージャダービーを控えているベティス。勢いに乗ってぶつかるためにも、次節のアラベス戦では勝利がほしいところだ。

「連敗だけは何としてもしたくないので、みんなで頑張ってやっていくしかないと思う。自分自身も、今日はスタメンでは出られなかったけど、出られるように練習からアピールしていきたい」

 思い描いたようなスタートを見せることができなかった乾とベティス。だが、結論を出すまでには十分すぎるほど時間が残っている。まずはアウェーのアラベス戦だ、乾がエイバルに所属していた昨シーズン、アウェー遠征のたびに訪れた空港があるバスク州のクラブでの試合で、レバンテ戦の敗戦を払拭するような勝利を手にしたい。

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