投資家の教えを守り、データを解析...
ビッグクラブの選手獲得に変化

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 ブラジル大会の後にバルセロナは、かみつき癖があることを世界に思い出させて4カ月間の活動停止処分を受けたルイス・スアレスを、6500万ポンド(当時のレートで約111億円)という「安値」でリバプールから獲得した。バルセロナは、世界的な投資家ウォーレン・バフェットの教えを守っている。

「他人が貪欲なときには慎重に、他人が慎重なときには貪欲になれ」

 だが今年のワールドカップは、移籍市場にほとんど影響を及ぼしていない。

 もちろん、ロシア大会で注目を集めた選手はいる。ビッグクラブが目をつけている選手を3人あげるなら、ベンジャマン・パバール(フランス)、アレクサンドル・ゴロビン(ロシア)、イルビング・ロサーノ(メキシコ)といったあたりだ。しかし彼らはワールドカップがなかったとしても、同じように注目されていただろう。

 バイエルンはパバールに目をつけている。それはワールドカップで活躍したからではなく、彼がブンデスリーガのシュツットガルトですばらしいシーズンを送ったからだ。

 ドイツのフットボール誌『キッカー』は、昨シーズンの最終戦でシュツットガルトがバイエルンを4-1で破った後、両クラブの間ではパバールの移籍について「すべて合意に達している」と報じた。

 パバールのバイエルン入りは来年になりそうだとの観測もある。いずれにしても移籍が実現すれば、フランス代表で務めた右サイドバックではなく、これまでクラブでやってきたディフェンスの中央でプレーすることになるだろう。

 メジャーな大会後の移籍が減ってきたのは、ビッグクラブのスカウティングチームの活動がどんどん緻密になっているためだ。クラブは3流のリーグの試合にも専門のスカウトを送り、選手たちのデータを日々ソフトウェアに解析させている。

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