モドリッチが述懐。クロアチア快進撃のきっかけとなった「監督の言葉」 (2ページ目)

  • ズドラフコ・レイチ●文 text by Zdravko Reic 利根川 晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 いったいダリッチは何と言ったのか?

「このチームは世界と互角に戦う力を持っている。知っているか? 君たちは普通の選手ではない。最高に優秀な選手たちなんだ」

 クロアチアに優秀な選手がそろっていることは、誰もがわかっていた。選手のほとんどは、ヨーロッパの強豪チームで主力としてプレーしている。しかし、なぜか代表チームではその力を十分発揮できないでいた。今回のロシアW杯は、モドリッチ世代にとって、タイトルに挑戦できる最後のチャンスである。ダリッチはそのことを彼らにあらためて自覚させた。

「今でなくて、いつやるんだ?」という自覚も、チームをひとつにまとめるのに役に立った。

 また、ダリッチはチーム内の和を保つこと、チームが平静にプレーできるよう全力を注いだ。交代出場を拒否したニコラ・カリニッチの追放は、かなり強力なメッセージであったと誰もが言っている。規律を乱す者は、どんな優秀な選手でもいらない。誰も不平を持ってはならない。彼はエースさえ追放することで、そのことを示したのだ。

 ダリッチは、歴代クロアチア代表監督のなかで、唯一、自分の考えを通してチームづくりをした人物でもある。協会やビッグクラブの「アドバイス」という名の命令にも屈しなかった。

 たとえば、ダリッチはGKコーチにドラゼン・ラディッチ(1998年のクロアチア代表GK)を起用したが、ラディッチはディナモ・ザグレブの幹部と戦争状態にあり、彼をコーチに入れないよう、かなり強固な横やりが入った。しかしダリッチは、「彼は私の第一の協力者でならなくてはならない。でなければこのままチームを去るのみだ」とつっぱねた。ダリッチは彼らとの戦いにも勝利したのだ。

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