「不自然さ」があったフランスの優勝。VARの活用に議論の余地あり (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki photo by JMPA

 少なくとも中盤は、イヴァン・ラキティッチ、ルカ・モドリッチ、ブロゾビッチの3人で構成されるクロアチアに大きく劣った。なにより展開力に欠けた。リュカ・エルナンデス(左)、バンジャマン・パヴァール(右)の両サイドバックはほぼ専守防衛に徹し、グリーズマン、オリヴィエ・ジルー、キリアン・ムバッペの3トップは、コンビネーションより個人プレーを優先した。

 グリーズマンの技巧、ムバッペのスピード、ジルーの高さを中盤選手が操るのではなく、ほぼ出たとこ勝負。個人能力に任せているので、クロアチアに攻め込まれる時間が長くなると、面白みに欠ける単純なカウンターサッカーに見えてしまう。

 ところが、1-2の時間が長く続き、クロアチアが前がかりになると、カウンターサッカーは有効になる。

 後半14分、ポール・ポグバがボレーで右サイドに大きく振ると、ムバッペが疾走。ゴールライン際から折り返すと、グリーズマンがボールをコントロールして、展開の起点となったポグバに、シュートをお膳立てするようなパスを戻す。ポグバのシュートはいったん、DFに跳ね返されたが、そのこぼれ球を再度シュート。クロアチアゴールを揺るがした。「勝負あり」を意味するゴールだった。それが流れの中から久しぶりに奪ったゴールであったことも含めて、いろいろな意味でダメ押しに値した。

 後半2分、クロアチアはアンテ・レビッチが左足で惜しいシュートを放っていた。GKウーゴ・ロリスの左指先のセーブでボールは枠外へ弾かれたが、これが決まっていたら、試合はどうなっていたかわからない。振り返れば、これは値千金のビッグセーブだった。

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