「不自然さ」があったフランスの優勝。VARの活用に議論の余地あり (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki photo by JMPA

 戦前の下馬評で上回ったのはフランスだ。クロアチアが中3日なのに対して、フランスは中4日。クロアチアは決勝トーナメントの3試合をすべて120分戦っているので、すべて90分で決着をつけてきたフランスは、消耗度という点でも丸々1試合分、勝っていた。

 そもそもフランスは、大会前からドイツ、ブラジル、スペインとともに優勝候補に挙げられていた。そしてグループリーグでドイツが、決勝トーナメント1回戦でスペインが、さらに準々決勝でブラジルが消えると、その段階で、優勝候補の大本命に祭り上げられることになった。

 そのチームが前半、流れの中からシュートが打てなかった。ボール支配率でもクロアチアに大きく上回られた。クロアチアにいいサッカーをされていた。フランスが苦戦を強いられていたというよりも、フランスは単純にクロアチアに劣っていたと言ったほうが正しい。2-1というスコアは、VARの矛盾が生んだ産物であり、両チームの実力をストレートに反映したものとは言えなかった。

 フランスといえば、かつてはパスワークのチームだった。80年代、ミシェル・プラティニ、ジャン・ティガナ、アラン・ジレス、ルイス・フェルナンデスといった中盤選手を中心に展開した美しいサッカーは、とりわけ日本のファンに訴求した。そうした魅力が、ディディエ・デシャン率いるこの2018年型のフランスには一切ない。

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