2018.07.15

W杯決勝直前。超速・フランスと好感度抜群・クロアチアの本質に迫る

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi photo by JMPA

 そんなフランスに対して、翌日にイングランドを下したクロアチアのサッカーは、どちらかといえばベルギーに近い。ここまでの勝ち上がり方も劇的な勝利が続き、好感度も抜群だ。ただ、2試合ともPK戦の勝利だったうえ、準決勝で対戦したイングランドの休養日が1日多かったこともあり、この試合はイングランド優勢と見られていた。

 そんな中、クロアチアのズラトコ・ダリッチ監督は、基本布陣の4-2-3-1ではなく、ロシア戦の途中から使った4-3-3でこの試合に挑んだ。ルカ・モドリッチとイヴァン・ラキティッチの看板ダブルボランチを一列上げて、3-1-4-2を敷くイングランドのアンカーポジションでプレーするジョーダン・ヘンダーソンの左右のスペースでプレーさせようという意図が見て取れた。

 しかし、前半開始早々に与えたフリーキックをキーラン・トリッピアーに直接決められたことと、疲労の影響から”らしくない”ミスパスやミストラップが目立ったこともあり、ダリッチ監督の狙いは奏功しなかった。

 一方、イングランドの選手の動きは元気そのもの。圧倒的な走力でプレッシャーをかけながら、ボールを奪ったら縦にキックして前線の選手を走らせる。中盤を制圧しようとしたクロアチアの狙いを外すかのように、中盤省略型のサッカーで前半を支配した。

 しかし、後半68分に潮目が変わる。ラキティッチの美しいサイドチェンジを右サイドバックのシメ・ブルサリコが受けると、ブルサリコが入れたクロスをイヴァン・ペリシッチがフィニッシュ。そこから試合はクロアチアペースに一転した。

 驚くべきは、クロアチアのスタミナだ。しかも「ピッチ上の選手は誰も途中で交代してくれなんて言わなかった」と試合後に振り返ったダリッチ監督は、後半終了の笛が鳴るまで交代カードを一枚も切らなかったのである。そして延長後半109分、マリオ・マンジュキッチが執念のゴールを決め、またしても劇的な逆転勝利を収めたのだった。

決勝進出を決めて喜ぶクロアチアの選手たち 誰が見ても、好感度がアップする勝ち方。今、世界中でクロアチアファンが急増しているに違いない。大会前にはアウトサイダーだったヨーロッパの小国は、小気味よい攻撃的サッカーを見せ、しかも3試合連続で120分を戦い抜いて決勝戦に勝ち上がったのだ。当事者以外の人であれば、心がクロアチアに傾くのも当然だ。

 これで、日程的にもアドバンテージのあるフランスは、勝って当然という視線を浴びながら決勝戦を戦うことになった。しかも、フランス人以外の多くの人は、クロアチア側に回って4年に1度のクライマックスに注目することだろう。

 見逃せないのはクロアチアの右サイド攻撃と、フランスの左サイドのディフェンスの攻防だ。デシャン監督が最後までブレずに、堅実采配を続けられるのかという点も見逃せない。守るものが何もないクロアチアは、間違いなく攻めてくる。それを、フランスが奥深きディフェンスでしっかり吸収すれば、もちろん勝機はフランスにあるだろう。

 世界が注目する4年に1度のファイナルは、現地時間7月15日18時(日本時間16日深夜0時)にキックオフする。

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