2018.07.15

W杯決勝直前。超速・フランスと好感度抜群・クロアチアの本質に迫る

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi photo by JMPA

 右前方に偏った陣形のベルギーに対して、左後方に偏った陣形のフランス。そこで繰り広げられた攻防が、勝負の分岐点となった。つまりフランス最大の勝因は、自陣左サイド深い位置で、ベルギーの右サイド攻撃を完璧に封じ込んだことにある。

 その立役者が、マテュイディと左ボランチのエンゴロ・カンテだった。もともとこの2人の守備力には定評があったが、この試合ではそれが際立っていた。

 まずマテュイディは、相手の右ウイングのデブライネと右サイドバックのシャドリに対して絶妙な中間ポジションをとって、間合いも含めた見事な動きでスペースを消し、チャンスがあれば自らボールを奪った。しかも、豊富な運動量を誇るため、攻撃時には前線にも顔を出してチャンスに絡む。デシャン監督が左ウイングで重用する理由がわかる。

フランスを率いるデシャン監督 また、マテュイディがボールに寄せた時のカンテのカバーリングも完璧だった。しかもカンテは、あらゆる危険地帯に顔を出す無尽蔵のスタミナがある。マテュイディのカバーリングだけでなく、時にはエデン・アザールのドリブル突破の防波堤にもなる。

 そんな中、後半51分にコーナーキックからサミュエル・ウムティティのヘディングシュートでフランスが先制する。1点を追うベルギーは、60分にドリース・メルテンスを右ウイングに入れてプランBに移行してデブライネを中盤に下げるも、効果なし。さらに80分には左サイドにヤニック・フェレイラ・カラスコを投入し、布陣を4-2-3-1に変更。しかし、プランCも不発に終わった。

 そしてベルギーが手を尽くしつつあった85分、デシャシ監督は満を持してFWオリビエ・ジルーに代えて守備的MFスティーヴン・エンゾンジを中盤の底に投入し、試合を終わらせにかかった。一方、マルティネス監督が持ち合わせていたプランは完全に尽きてしまった。

 結局、ボールポゼッションとパス本数ではベルギーが圧倒するも、フランスはシュート数では19本対9本で上回った。これこそがデシャン監督率いるフランスの本質であり、強みでもある。それが単なる守備的サッカーではないことは、明らかだろう。

 最後まで懸命に仕掛けたベルギーに対し、フランスが懐の深さを見せた試合。日本戦、ブラジル戦と、ハリウッド映画のような誰もが楽しめるスペクタクルサッカーで勝ち上がったのがベルギーだとすれば、フランスのサッカーにはフェデリコ・フェリーニのようなヨーロッパ映画の趣がある。