セレソンは甘やかされていた。チッチ監督は続投も、ネイマールは正念場 (4ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 チームに本物のリーダーがいなかったことも、マイナスに働いた。ブラジルにはピッチの中の精神的主柱、責任を負う者がいなかった。ブラジルは今回のW杯で、キャプテンの交代制をとっていた。つまり全試合、キャプテンが違った。みんながキャプテンとなり、みんなで責任を負うシステムは、論理としては美しい。しかしチームが混乱したとき、それを収拾できる者はやはり必要だった。

 また、これは何も今大会に始まったことではないが、どの選手もブラジルとの縁が希薄である。今回の代表選手のほとんどは若くしてブラジルを去っている。ネイマールは19歳、コウチーニョは18歳で外国に行ってしまった。ブラジルで生まれたが、選手として成長したのはブラジルではないのだ。

 ブラジル人にしても、選手が国外のチームでプレーしているから、愛着が薄い。フィルミーノのプレーを、多くの人はナマで見たことはない。「カゼミーロって誰?」「フェリペ・ルイス?」「アリソン? 知らないな」......。セレソンはサポーターと愛国心に支えられたメンタルの強さも持てなかった。

 さて、起こってしまったことを嘆いてばかりいても仕方ない。大切なのはこれからのセレソンのあり方だ。

 私としてはあまり承服できないが、チッチはこのまま監督として残るだろう。彼も続投に意欲的だ。しかし次回のW杯では、多くの選手の名前が変わることになるだろう。その際には、ぜひブラジル国内でプレーする選手を多く起用してほしい。国内にも優秀な若手はたくさんいる。そして「我々はブラジルだ」という誇りはいったん捨て、最初からチームをつくり直してほしい。

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