通好みの「中盤力」でフランスが勝利。それでも不安が漂うのはなぜか (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 ベルギーが押し、フランスが盛り返す。そこで前半は終了した。後半の展開はどうなるのか。いったんリセットされるのか。フランスがこのまま押し続ける保証はなかった。

 実際、後半3分には、いきなりロメル・ルカクに際どいシュートを浴びる。絶対に負けられない戦いの呪縛にはまり、プレーが慎重になる可能性は大いにあった。延長にもつれ込む可能性もあり得る。厄介な展開にはまり込みそうなムードが漂い始めていた。そのときだった、フランスに先制点が生まれたのは。

 後半6分、左サイドでリュカ・エルナンデス、マテュイディとつなぎ、オリビエ・ジルーが際どいシュートを放つ。そしてCKを得ると、アントワーヌ・グリーズマンがボールをセットした。その左足インフロントは、ややフック回転の弧を描きながらニアポストへ。

 ヘディングの競り合いに勝利したのは、一瞬、194センチのフェライニのように見えた。しかし、直後、ガッツポーズを決めていたのはサミュエル・ウムティティ。勝者は長身のアフロヘアではなく、褐色の弾丸CBだった。

 力が接近する2チームが対戦した時、片方のチームがゴールすれば、片方のチームが押し返すのがサッカーの常だ。ベルギーベンチは、プレーに冴えがなくなっていたデンベレに代え、ドリース・メルテンスを投入。右ウイングに張らせるように置くと、試合は案の定、再度ベルギーに傾いた。

 フランスがその後、引き気味に構えたことも見逃せない。フランスは前半序盤のような戦いに、自ら好んで戻ったようにも見えた。絶対に負けられない戦いの呪縛に、再びはまり込んでいくかのように。その結果、62分、65分、81分、89分と、連続して際どいチャンスを作られる。アシショナルタイムにも2度ほど、肝を冷やすようなシュートを浴びた。

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