眠れる獅子が目覚めた。イングランドが身につけつつある「真の強さ」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文text by Komiya Yoshiyuki 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 6得点で大会最多ゴールを記録中のケインも慎重な発言をしていた。

 そうして挑んだスウェーデン戦も、ビルドアップはしばしば滞っている。左サイドのアシュリー・ヤングに預けるくらいしか、選択肢がなかった。守備に関しても、ポジション的優位を保てていない。中盤の背後のスペースにスウェーデンの選手に入られ、ディフェンスラインは何度も無防備な形で攻撃に晒(さら)されている。GKジョーダン・ピックフォードはそのたびに味方を叱咤したが、修正が施されることはなかった。

 つまり、戦い方としては粗(あら)が目立っていた。

「なぜうまくいかなかったのか、私にはわからない。CKからの1点が入るまで、試合は拮抗していた。しかしそれを決められて、5バック気味になった相手を攻めあぐねてしまった」

 スウェーデンのヤンネ・アンデション監督がそう振り返っているほどだ。

 イングランドは前半30分、左CKを得た。ヤングが蹴ったボールを、ケインの背後に入ったセンターバックのハリー・マグワイアが高い打点から叩きつけ、先制点を奪っている。それは得意の形だった。

 イングランドの攻撃は単調だったが、自分たちの武器で戦局を有利に動かした、ともいえる。

 その後は、やや劣勢になりながらも懸命にしのぎ、後半14分には、波状攻撃からのクロスをデレ・アリがヘディングで合わせた。待望の、流れからの得点だった。反撃に打って出てきたスウェーデンに対して、真っ向から挑みながら、力強くゴールを突き刺した。

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