日本戦の視聴率38%! イタリア人はリアル「キャプテン翼」に惚れた (2ページ目)

  • 利根川晶子●文 text by Tonegawa Akiko photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 反対に、強豪国に対しては反発の気持ちが強い。イタリアは世界に8カ国しかないW杯優勝経験国のひとつ。優勝回数はブラジル(5回)に次ぐ4回で、ドイツとタイの2位だ。ブラジルにはこれ以上引き離されたくないし、ドイツには絶対に追い抜かれたくないという思いが強い。

 イタリアでは「優勝する!」などと、はっきり言葉にしてしまうと、その願いがかなわなくなるというジンクスがある。だからふだんから選手や監督に抱負を尋ねても、絶対に目標を明言したりしない。それを逆手にとって、SNS上には「アルゼンチン優勝!」「ドイツ優勝!」などの呪いの文字が並んだ。

 呪いが効いたからかどうかはわからないが、今回のW杯は番狂わせが多い。ドイツ、アルゼンチン、スペイン、ポルトガルといった強豪国が早々に姿を消していくことは、イタリア人にとってはかなり溜飲が下がる出来事だった。つまり、「なーんだ、俺たちだけじゃないじゃないか」というわけだ。

 なかでも一番盛り上がったのは、ドイツのグループリーグでの敗退だ。

 あの夜のイタリアはかなり沸き上がった。一般的に近隣の国に対してはライバル意識を強く持つもので、サッカーだけに限らずイタリア人はドイツが嫌いだが(ちなみに同じ理由からフランスも嫌い)、なによりイタリアが予選敗退をしたときのドイツのリアクションが、イタリア人の癇(かん)に障るものだった。

 ドイツ各紙は一面に「アリヴェデルチ(イタリア語でさよなら)、イタリア」の大見出しを載せ、元ドイツ代表のミヒャエル・バラックは自身のTwitterに「イタリアのご冥福をお祈りします」と載せ、バスティアン・シュバインシュタイガーはアメリカのテレビ局のインタビューに「W杯の優勝候補はイタリアかオランダ」と、ニヤニヤしながら答えていた。

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