スペインは1000本ものパスの無駄使い。敗退は決して偶然ではない (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 この試合、スペインのボールポゼッション率は70%に達し、つないだパスの本数は1000本を超えた。通常、1試合でのパス総数が600本を超えれば多いほうだが、1000本となるとちょっとした異常値だ。スペインが圧倒的に攻めていたというより、何もできずにボールを持て余していた様子を物語る。

「スペインのアイデンティティははっきりしている。若い選手も育ってきているし、それが大きく変わることはない」

 前任のジュレン・ロペテギ監督の電撃解任を受け、急きょ就任したスペインのフェルナンド・イエロ監督はそう語り、まさかの敗戦にも楽観的な姿勢を崩さない。

 だが、2008年から2012年にかけて、ユーロとワールドカップを"3連覇"した黄金時代を知るメンバーが少なくなり、一方で確かに若手が育ってはいるが、MFシャビやアンドレス・イニエスタのような大黒柱となりうる選手の後継者はなかなか現れてこない。過渡期に入ったスペインが、2年前のユーロに続いてベスト16で敗退したことは、決して偶然ではないだろう。

 さて、話をロシアに戻そう。

 グループリーグでは明らかに組み合わせに恵まれたとはいえ、サウジアラビアとエジプトから計8ゴールを奪って決勝トーナメントに進出してきたロシアだが、今度は一転、守り倒すことで優勝候補の一角を退けた。

「(守備的な)新しいシステムを採用することは、痛みのともなう決断だった。本当はやりたくなかったが、私を信じて選手がよくやってくれた」

 ロシアのスタニスラフ・チェルチェソフ監督はそう語り、守備的な戦いが本意ではないことを明かした。

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