前回王者ドイツ敗退の深層。傲慢だったレーヴ監督の「理想主義」 (3ページ目)

  • 山口裕平●文 text by Yamaguchi Yuhei photo by AFLO

 その兆候はレーヴ監督の言動からも明らかだった。レーヴ監督は大会前、ドイツ紙『WAZ』(ヴァッツ)に対して、こう語っていた。

「ドイツは過去の大会で、比較的いつも成功を収めてきました。しかし、2000年や2004年のユーロでドイツが見せたようなスタイルは、私を含めて多くのファンには気に入りませんでした。それは残念なことです。

 当時、私はユルゲン・クリンスマン前ドイツ代表監督に、『我々はまた、我々自身のサッカーをしなければならない』と進言しました。なぜなら、走る、戦う、スライディングするといったことは、小さな国にもできるからです。もちろんそれらは重要ですが、それだけではいけません。そうしたスタイルで再び頂点に立つことはないでしょう。ドイツの美徳は、プレースタイルに含まれていなければなりません」

 そんなレーヴ監督の志向は、選手選考にも反映されていた。レロイ・サネの落選はそれを象徴している。マンチェスター・シティで納得のシーズンを送った快速ウインガーの代表メンバー落ちは、ドイツだけでなく、世界を驚かせた。

 代わりに選出されたユリアン・ブラントも大きな才能の持ち主で、コンビネーションプレーを得意とするという意味で、チームにフィットする。しかし、アタッカーは似たようなタイプの選手ばかりになり、攻撃陣が機能不全に陥ったとき、別の形を用意することができなかった。

 サンドロ・ワグナーの落選も、レーヴ監督の考えを色濃く反映している。ワグナーは落選後、「僕は正直に口にするタイプ。どうもドイツ代表の指導者陣とはうまく合っていなかったようだ」と、自らの自己主張の強さが落選の要因であることを匂わせた。

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