前回王者ドイツ敗退の深層。傲慢だったレーヴ監督の「理想主義」 (2ページ目)

  • 山口裕平●文 text by Yamaguchi Yuhei photo by AFLO

 しかし、残念ながらメキシコとの初戦でも同じ光景が繰り返された。序盤から何度もボールを奪われてはカウンターをくらい、そのうちのひとつが致命傷になってしまった。

「今日の僕らはあまりにも簡単だった。僕らはサウジアラビア戦のようにプレーし、相手は(サウジアラビアよりも)いいチームだった。不用意なボールロストやリスクマネージメントについてはチームで話をしていたが、改善されていなかった」

 メキシコ戦後のフンメルスの言葉は、危機管理意識の低いチームに対する悲痛な叫びとして響いた。

 続くスウェーデン戦は2-1で劇的な勝利を飾ったものの、根本的な問題解決には至らず、トニ・クロースのボールロストから先制点を許した。韓国戦でも終盤は焦りから攻撃が雑になり、何度も危険な場面を迎えることになった。先制点につながるCKもクロースのパスを中盤でカットされたところから始まっている。結局、今大会のドイツは最後までこの問題を解決することができなかった。

 多くのカウンターを許すということは、攻撃が行き詰まっていることの裏返しでもある。ただ、ドイツもまったくチャンスをつくれなかったわけではない。どれかひとつでもモノにできていれば、決勝トーナメントに進出することはできていただろう。しかし、それ以上はなかったはずだ。守護神マヌエル・ノイアーは「ラウンド16では誰もが僕らと対戦したかっただろう」と語っている。

 ドイツにとってもっとも問題だったのは、うまくいっていない戦い方を最後までやり通そうとしたことだろう。もっといえば、自らのスタイルにこだわったことにある。つまりパスサッカーだ。

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