「メッシ・ロナウド時代」を揺るがす。モドリッチがバロンドールに浮上 (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Getyy Images

 モドリッチはエースとしてクロアチアを牽引する。ロシアW杯でも、第1戦のナイジェリア戦は右CKが先制点の起点になった後、2点目のPKを決めた。そして第2戦、アルゼンチン戦はミドルレンジから目覚ましいゴールを叩き込んだ。連勝を飾って、母国を決勝トーナメント進出へ導いている。

 MFとしての才能は傑出。サッカーインテリジェンスが高く、人とボールを動かし、プレーの渦を作れる。同時に守備のセンスも備え、インターセプトだけでなく、ポジションを守りながら、突破をはばみ、パスコースを切る、という丹念な仕事ができる。また、攻め上がったときにアタッカーとして、決定的な仕事もできる。ラストパスは芸術の域に達しているが、狙撃手のような一撃でゴールも仕留められるのだ。

「モドリッチはトップ下も、ボランチもできる数少ない選手。いそうでいない」

 ジョゼップ・グアルディオラの師匠として知られるファンマ・リージョは、興味深い見解を示している。

「攻撃でひらめきのあるプレーができるトップ下の選手は、守備面でどうしても怠惰になったり、連続性がなかったりする。逆に、安定した守備からプレーメイキングするボランチの選手は、前線近くのハイプレッシャーの中で相手の裏をかくような意外性が乏しい。しかし、モドリッチはポジション次第で、正しいプレーに変換できるんだ」

 モドリッチは所属するレアル・マドリードでも、ボランチ、インサイドハーフ、トップ下とポジションを変えながら、質の高いプレーを見せている。

「モドリッチのプレーメイキングこそ、マドリーの戦術である」

 そう断言するスペインの記者も少なくない。事実、モドリッチ不在のときのマドリーはボールの流れがひどく悪く、しばしばノッキングを起こす。決定機の数も激減。マドリーの欧州3連覇の主役は6年連続得点王のロナウドであるように思われるが、チームの舵取りをしていたのはモドリッチなのだ。

 そう考えると、ロシアW杯の戦い次第では、モドリッチがバロンドールを受賞してもなんら不思議ではない。クロアチアはグループリーグ第3戦、アイスランドを下し、3連勝でベスト16に進んでいる。モドリッチは後半途中でお役御免だった。

「寡黙な選手で、インタビューで言葉を引き出すのが難しい」

 そう言われるモドリッチは、アンドレス・イニエスタと同じで、ピッチで雄弁に語る選手なのだろう。イニエスタはW杯決勝でゴールを決め、優勝したにもかかわらず、バロンドールにはあと一歩手が届かなかった。その年はメッシがそれ以上のインパクトを残していたからだ。

 クロアチアの英雄、モドリッチはロシアで勇躍し、栄誉を受けられるだろうか。

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