用意周到なイングランド。日本が対戦するならセットプレーに要注意 (2ページ目)

  • 田嶋コウスケ●文 text by Tajima Kosuke
  • photo by AFLO

 また、相手の出方によって臨機応変にシステムや攻め方を変える「対応力」にも乏しい。攻撃が停滞したチュニジア戦の後半は、こうしたウィークポイントが露呈された格好である。

 そんなイングランド代表に、チュニジア戦で勝利をもたらしたのはセットプレーだった。このセットプレーこそが、現時点でもっとも威力を発揮しているといっても過言ではない。

 過去にはデビッド・ベッカムやスティーブン・ジェラードら優れたプレースキッカーを擁したが、現代表に世界的名手と呼べるキッカーはいない。それよりもアイデアや空中戦の強さを生かして、ゴールを量産している。

 グループステージ第2戦までにイングランドが挙げた8ゴールの内、セットプレーによる得点は実に6ゴールにのぼる。内訳はCKが3ゴール、FKが1ゴール、PKが2ゴール。なかでも、2−1の接戦となったチュニジア戦で決めた2ゴールは、いずれもCKからケインがネットを揺らした。用意周到に準備してきたCKのパターンから、ケインが仕留めたのである。

 両得点ともキッカーは、ペナルティマーク付近をめがけてボールを入れた。競り合うのは、188cmのジョン・ストーンズや、194cmのハリー・マグワイアの長身DF。そして、ケインはこの空中戦に加わらず、ファーサイドに突進。セカンドボールやGKがこぼしたボールを狙う役割を担った。

 たしかに、1−1で迎えた後半アディショナルタイムにケインが挙げた決勝ゴールは、この形から生まれた。かくいう筆者も、「なぜケインがそこに?」と驚きを隠せなかった。

 ただ、英紙『タイムズ』によれば、7回あったCKのうち4回は、「PKスポット付近にボールを入れ→ファーサイドにつめたケインに渡す」流れだった。そのうちの2回がゴールになり、勝利につながったのだ。つまり、ケインの得点力を生かそうとする「チーム戦術」が功を奏した格好で、ケインがあえてファーサイドに動いたわけでも、感覚だけで決めたわけでもなかった。

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