アルゼンチンは「メッシと愉快な仲間たち」でクロアチアに勝てるのか (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 ある代表チームの監督が、僕にこんな解説をしてくれた。バルセロナでのメッシは、何人かの選手と短いパスを交換した後で、たいてい相手のペナルティーエリア近くでボールを受ける。そのときは4人くらいのチームメイトが近くにいて、それぞれ相手DFを引きつけている。メッシはパスもシュートも、ドリブルもできる。相手DFはメッシが何を選択するかわからない(ひとつだけメッシがほとんどやらないのは、自分の右にパスを出すことだ)。

 これまでメッシはバルセロナで、3つのポジションをこなしてきた。攻撃の右サイド、フォルス9(「偽の9番」、中盤に降りてくるFW)、そして今シーズンはいわゆる「10番」のプレーメーカーだった。どのポジションで起用されても、ショートパスを多用するバルセロナのスタイルはメッシに合っている。

 アルゼンチン代表で「10番」としてプレーするのはメッシに合わないという以前からの議論は、今シーズンの彼がバルセロナですばらしいパフォーマンスを見せたことを考えれば、当たっていないように思える。

 いまのアルゼンチン代表の問題は、システムがないことだ。このチームにはアイデアもない。1978年にワールドカップを獲得したときのアルゼンチン代表監督セサル・ルイス・メノッティは、こう語る。

「アルゼンチン代表ではすべてが混乱しており、メッシは身動きがとれない。バルセロナでの彼は『プレー』しているが、代表での彼は、ただ走っている」

 それでもブラジル大会決勝のドイツ戦で、チームメイトのゴンサロ・イグアインが前半の早い時間に訪れた絶好のシュートチャンスをミスしていなかったら、メッシは"第2のマラドーナ"と崇(あが)められていたかもしれない。パッとしないチームメイトたちを世界王者の座に就けた国の救世主になったかもしれない。

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