ドイツ撃破のメキシコ。6カ月前から研究し、王者相手でもビビらない

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 ワールドカップF組の初戦、ドイツvsメキシコの試合が行なわれる、ルジニキ・スタジアムへ向かう地下鉄に乗っていたときのことだ。

 順調にスピードを上げて走っていた電車が、駅でもない場所で急停車。ほどなくして何事か車内アナウンスが(もちろん、ロシア語で)あったと思ったら、隣に立っていた地元の女性がくすっと笑った。

 急に笑い出したことに驚いた私が視線を向けると、彼女はその理由を(英語で)教えてくれた。

「『電車を揺らさないでください』ですって。とても変わったアナウンスだわ」

 折しも試合開始2時間半前。スタジアムへ向かう地下鉄は、どの車両もドイツとメキシコのサポーターで呉越同舟の満員状態だった。幸いにして、私は比較的空いている車両に乗ることができたのでわからなかったが、どこかの車両で興に乗じたサポーターが一斉に飛び跳ね、車両を大きく揺らしたのだろう。

 サッカー人気の高い国ならさほど珍しい話ではないが、ロシアの人たちにはあまり聞いたことのない、奇妙な出来事だったようだ。

 さて、肝心の試合はというと、あたかも地下鉄の熱気をそのままスタジアムに持ち込んだかのような、非常に見応えのある好ゲームとなった。

 結果は1-0でメキシコが勝利。4年前の前回大会に続く連覇を狙うドイツが、グループリーグ初戦にして早くも敗れる番狂わせである。

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