メッシのための滅私奉公も空回り。
高齢アルゼンチンの先行きに暗雲

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 この日はアイスランドにプレスを浴びて逆襲の餌食になることはなかったが、下がれば下がるほど、メッシの魅力は失われた。同時に怖さも半減。メッシはメッシでなくなっていった。

 この前日、ソチ五輪スタジアムで観戦したポルトガル対スペイン戦が頭をよぎった。クリスティアーノ・ロナウドの爆発力を最大限、活かそうとしていたポルトガル。それはアルゼンチンとは対照的な姿だった。スペインの守備陣は、C・ロナウドがボールに触れるたびに、恐怖に晒(さら)されることになったが、アイスランドの守備陣は、必ずしもそうではなかったのだ。

 C・ロナウドとメッシは現代のサッカー界にとって、まさに宝物だ。それをどちらのチームが有効に使えているか。至宝として扱っているか。ポルトガルがスペインに互角に立ち向かえた理由はそこにあった。

 気負えば気負うほど、メッシはゲームメーカーに成り下がる。その結果、トップにはアグエロが残ることになるが、屈強なアイスランド相手に1トップを任せるには小さい。ポストプレーも得意ではない。メッシが下がると、アルゼンチンのバランスは大きく崩れるのだった。

 周囲が抜群に巧いのなら問題ない。だが、アルゼンチンの選手は、例えばいまのスペイン人選手に比べ、技巧度で劣る。ポルトガルがC・ロナウドに活躍してもらわなければ困るように、アルゼンチンもメッシに活躍してもらわなければマズい状態にあるのだ。少なくとも優勝は狙えない。

 若手に勢いのある選手がいないので、メッシのワンマンチーム度は高まるばかりである。しかし、それを活かす仕組みができていない。アルゼンチンは試合巧者とは言えなくなっている。スペインに技巧で劣るなら、せめてポルトガル的であってほしいが、その覚悟はない様子。アルゼンチンがロシアW杯で何かを起こすことは難しいと見る。

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