データが示す「史上最強のメッシ」がアルゼンチン代表で輝けない理由

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】アルゼンチン代表とメッシ(前編)

 僕が初めてリオネル・メッシを見たのは、彼がアルゼンチンにワールドカップをもたらしたときだった。

 2005年、オランダのユトレヒトで行なわれたU-20ワールドカップの決勝で、アルゼンチンはナイジェリアを2-1で破った。アルゼンチンのセンターフォワードは植木鉢みたいな髪形をした子で、その日だけ急にチームに加わることになったような表情をしていた。

 チームの2点はどちらも彼が決め、どちらもPKからだった。僕がよく覚えているのは2点目のほうだ。ナイジェリアのGKが体の重心を少しだけ右足にかけたとたん、メッシはゴールの反対側にボールを流し込んだ。

 スタンドで僕の隣に座っていたチェルシーの伝説的なスカウト、ピエト・デ・フィッセルは「マラドーナだ......」と、つぶやいた。3年後の北京オリンピックでも、メッシはU-23アルゼンチン代表を率いて、再びナイジェリアに決勝で勝ち、金メダルを獲得した。

W杯初戦アイスランド戦を前に、合宿地で調整するリオネス・メッシphoto by Getty ImagesW杯初戦アイスランド戦を前に、合宿地で調整するリオネス・メッシphoto by Getty Images メッシはいま30歳。バルセロナでのパフォーマンスには「GOAT(Greatest of All Time=史上最強)」という賛辞が寄せられている。

 しかし彼は、まだA代表でトロフィーを獲得したことがない。ワールドカップを複数回獲得した数少ない国のひとつであるアルゼンチンにとっては、実に歯がゆい状況だ。

 なぜメッシを擁するアルゼンチンはワールドカップで優勝できないのか。その悪しき伝統を今大会で覆すには、どうすればいいのか。

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