中国人記者をギャフンと言わせた、W杯現場の「サッカー国際情勢」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki Photo by Getty Images

 試合後の町も、いたって静かだった。乗り場で拾ったタクシー運転手は、筆者がぶら下げていた取材パスを見て、Google翻訳を使いながら、「ロシアはサウジに5-0で勝ちました」と誇った。しかし、たいした興味もない様子で、その後はずっと下ネタを連発していた(Google翻訳のズレた翻訳のおかげで、これがなかなか楽しめる)。

 ちなみに、ロシア人は冷たい、暗い、というイメージがあるが、これは少し違う気がする。筆者は1999年以来の再訪だが、当時、知り合った人たちは親切で丁寧だった。政治や歴史の印象が先入観になっているのだろうが、国と人は必ずしも同義ではない。筆者が過去に取材したアレクサンドル・モストボイ、バレリー・カルピンといった元ロシア代表選手たちも、考え方や表現は独創的で、面白みのある人物だった。もっとも、彼らも皮肉屋で、気難しい一面はあったが......。

 ロシアがグループリーグを突破すれば、この国も自然に盛り上がるだろう。

「まだ始まったばかりよ」

 ロシア人ボランティアの女の子はすました顔で言っていた。これくらいで大騒ぎするのはみっともない、という大国の見栄だろうか。サウジに勝っても、エジプト、ウルグアイに連敗すれば沈むのだ。

 ともかく、4年ごとのW杯は幕を開けた。情熱も、誇りも、偏見も、すべてを飲み込む、世界最大のお祭りが始まった。

◆中田英寿と本田圭佑。2人は中村俊輔にとって、どんな存在だったのか>>

◆データが示す「史上最強のメッシ」がアルゼンチン代表で輝けない理由>>

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る