アルゼンチン代表がW杯前に
トホホ状態。イスラエル戦中止で大騒ぎ 

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 イスラエルはすでに移動費などの経費をすべて支払っており、それだけでも50万ドル(約5500万円)にのぼるという。また、アルゼンチンはすでに契約金として185万ドル(約2億円)を受け取っている。今後、アルゼンチンが支払う違約金はかなり高額になると思われる。
 
 ただ、選手たちはこの決定を支持しているようだ。

「試合中止は正しい決断だったと思っている。身の危険を感じるような脅しを受けては、こうするしかない。きっとエルサレムに行っても平常心でプレーすることはできなかっただろう。これは決して政治的な決断ではない。我々は誰とも対立してはいない」(イグアイン)

「この決定にはチーム全員が納得している。状況は他の方法がないことを示している。今、何よりも重要なのは精神的に落ち着き、可能な限り身心のコンディションがいい形でW杯にたどり着くことだ。政治がどうとかは我々には何の関係もない」(メッシ)

 一方、アルゼンチン国内の世論は二分している。

 契約を交わしたのに、デモや脅しにも近い抗議で試合を取り止めたのは、国の信用を貶めるという意見もあれば、何より大事なのはW杯をトップコンディションでプレーすることだから、こんな試合はしないほうがよかったという意見もある。しかしどちらの意見も、アルゼンチンサッカー協会の不手際を責めているのは同じだった。

 アルゼンチンサッカー協会の体たらくは何も今に始まったことではない。

 アルゼンチンサッカー界では、35年という長きにわたり、フリオ・グロンドーナ元会長が絶対的権力を握っていた。ところが2014年にグロンドーナが死去すると、その後釜を巡って協会内で激しい後継者争いが勃発。汚職が蔓延し、会長選挙は不正だらけで、FIFAが介入するまでになった。

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