リバプールはレアル相手に得意の戦術「ストーミング」を決められるか (3ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 ストーミングの興味深い点は、技術の高いチームに対して大きな効果を発揮する傾向があるところだ。

 ディフェンシブなチームに対してストーミングを仕掛けるのはむずかしい。10人のフィールドプレーヤーが、みんな後方に引いているからだ。昨シーズンのFAカップ4回戦で、リバプールがチャンピオンシップ(2部に相当)に所属するウォルバーハンプトンに1-2で敗れた理由の一端は、ここにあるかもしれない。

 ロングボールを多用するチームに仕掛けるのも難しい。相手はボールを大きく蹴り出すから、ストーミングをかけようとする選手を越えてしまう。

 しかし、DFからパスをつなぐチームはストーミングに弱い。バルセロナが1年強の間に、パリ・サンジェルマン、ユベントス、ローマに敗れたのは、その点から説明がつきそうだ。

 技術のあるチームのDFは、守備力より攻撃力を買われて起用されることが少なくない。たとえば、ダビド・ルイス(チェルシー)やジョン・ストーン(マンチェスター・シテイ)だ。これらの選手はストーミングに苦しむことが多い。

 フットボールに新しい戦術が登場すると、有能な戦術家たちはそれを採用するかどうか決断を迫られる。マンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラ監督は、ストーミングをけっこう気に入っている。

 それはグアルディオラが、プレスの伝統のなかでキャリアを築いてきたためかもしれない。彼が所属したバルセロナはボールを失ったら5秒以内に取り返すことを目指していた。ただし、ボールを保持しているときは、のんびりとパスを回した。後にバイエルンの監督を務めたとき、グアルディオラはドイツの速いペースとオーバーラップの伝統を吸収した。

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