リバプールはレアル相手に得意の
戦術「ストーミング」を決められるか

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 あるいは、今シーズンのCL準々決勝で激突したユベントスとレアル・マドリードのように守備が堅いはずのチーム同士の対戦が、0-3、3-1という大味なスコアになったことにも注目すべきだろう。

 ブラジルもパリ・サンジェルマンも、ユベントスもレアルも、以前はボールを保持する試合運びをしていた。だから相手チームに自陣でボールを奪われると、それだけで混乱してしまう。

 ストーミングを最も重視にしているのは、「超トップクラス」と呼ぶには何かが少しだけ足りないチームだ。たとえばローマやナポリであり、リバプールもそうだろう。

 リバプールにはモハメド・サラーを除けば、「世界のベストイレブン」に入りそうな選手はいない。後方からビルドアップしていてはCLを勝ち取ることはできない。そこでリバプールは、フィットネスを向上させ(おそらくリバプールほど激しい練習をしているチームはない)、攻撃のペースを速めることに力を入れた。

 一方、世界でも指折りのテクニックを持つチームは、もっとゆっくりとビルドアップできる。バルセロナが最高の例だが、レアル・マドリードもアトレティコ・マドリードよりは攻撃に時間をかけている。スポーツデータ分析サービスのoptaによると、ボールを持ったときのバイエルンは、1秒間に前に進む距離がブンデスリーガで最も短い。

 しかし、バイエルンやレアルもストーミングの要素は使っている。この2チームの攻撃的なウィングバックを思い出すといい。両者が対戦したCL準決勝の第1戦では、バイエルンのヨシュア・キミッヒとレアルのマルセロがともに今季のチャンピオンズリーグでの3点目を決めた(キミッヒは出場10試合目、マルセロは9試合目だった)。

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