ベンゲル最大の功績は、名古屋から移ってすぐに断行したプレミア改革 (4ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

 もともとイングランドには、選手の補強についても監督が権限を持つという全権委任の伝統が存在していた。しかし、金の力がものを言うボスマン裁定時代を見据え、ワールドワイドな視点でその伝統を洗練化させたことは、ベンゲルの慧眼(けいがん)に他ならない。分業がトレンドになっている現在では時代遅れに感じるかもしれないが、当時はそれがクラブ経営におけるひとつのイノベーションだった。

 いずれにしても、その後アーセナルの成功を目の当たりにした各クラブが大陸に視線を向けたのは当然の流れと言える。ベンゲルが突破口となり、やがてプレミアにはジェラール・ウリエ(フランス/リバプール、アストンビラ)、ジャンルカ・ヴィアリ(イタリア/チェルシー、ワトフォード)、クラウディオ・ラニエリ(イタリア/チェルシー、レスター・シティ)、ジャン・ティガナ(フランス/フラム)といった外国人監督が次々と誕生。島国と大陸のギャップを埋めるどころか、プレミアリーグが名実ともにヨーロッパを牽引する時代が到来したのである。

 だからこそ、現在のプレミアリーグの潮流が22年前に端を発していたことを忘れるべきではない。時代の先駆者であり、イノベーターでもあるベンゲル最大の功績は、そこに集約されているのではないだろうか。

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