「カルチョの星」となったローマ。
CL初制覇へ因縁のリバプールと激突

  • 井川洋一●文 text by Igawa Yoichi
  • photo by Getty Images

 さらに終盤には、売り出し中のジェンギズ・ウンデルの鋭いCKにコスタス・マノラスがニアで頭を合わせて3点目。このギリシャ代表DFの驚愕と興奮と誇りが入り混じった表情は、残像として刻まれる種類のものだった。その後はバルサの猛攻を決死の守備でしのぎきり、大逆転劇を締めくくった。テレビカメラは少年たちの涙を映し、世界中のフットボールファンのハートが揺れた。

 ローマで起こった奇跡とイタリアの再興を重ね合わせるのは、いささか強引かもしれない。事実、この日のピッチに立ったイタリア人選手はデ・ロッシとアレッサンドロ・フロレンツィ、途中出場のステファン・エル・シャーラウィの3人だけ。ただしチームをCL4強に導いたエウゼビオ・ディ・フランチェスコ監督は、現在のセリエAで台頭する気鋭のイタリア人戦術家のひとりだ。

 2001年にフランチェスコ・トッティやガブリエル・バティストゥータ、中田英寿らと共に、ローマ史上3度目のスクデット獲得に貢献したMFは、サッスオーロで示した指導手腕を買われ、今オフに監督として古巣に迎えられた。

 この試合ではそれまでほとんど試したことのない3バックと、変形型の2トップを用いて勝利を手繰り寄せた。戦術的な指導力に優れているのはもちろん、あれだけタフなスタイルを掲げて選手たちに走り切らせたところもすごい。

 今季の国内リーグでは彼のほか、ラツィオのシモーネ・インザーギやミランのジェンナーロ・ガットゥーゾら、40代の新進監督たちが切磋琢磨している。彼らはきっと、愛する祖国にカルチョのルネサンスを起こそうと決意しているはずだ。

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