2018.04.24

「カルチョの星」となったローマ。
CL初制覇へ因縁のリバプールと激突

  • 井川洋一●文 text by Igawa Yoichi
  • photo by Getty Images

 ホームの第2戦で、今季のラ・リーガとCLで無敗を誇っていた相手から3-0の圧勝を収め、これ以上ないほどドラマティックな形で逆転突破を果たしたのだ。オペラの劇作家でも思いつかないような筋書きだったといったら、大袈裟だろうか。

 ローマの本拠地であるスタディオ・オリンピコはその夜、現代のコロッセオと化した。フットボールクラブのアンセムとして、リバプールの『You’ll never walk alone』と双璧を成す『Roma, Roma, Roma』の切なさと高揚感のあるメロディがいつも以上に響き渡り、奇跡を生み出す闘いの舞台を整えた。

 キックオフの笛が鳴ると、えんじ色のシャツをまとった選手たちは何かに憑(つ)かれたようにボールを追い回した。彼らの背中を押そうと、大勢のロマニスタたちは一つひとつのプレーに歓声を上げ、口笛を鳴らす。そして異様な空気が支配する闘技場で”グラディエーター”が先陣を切った。

 エディン・ジェコ――かのアカデミー賞作品でローマの将軍を演じたラッセル・クロウにも劣らない肉体を持つストライカーだ。慈善活動にも勤(いそ)しむ心優しき勇敢なボスニア・ヘルツェゴビナ代表FWは、相手最終ラインの裏に抜けてダニエレ・デ・ロッシのフィードを引き出すと、巧みにボールをコントロールして次のバウンドで押し込んだ。

 夢を信じてもいい。そう思わせる先制点が開始6分で決まった。

 ファーストレグでの貴重なアウェーゴールも奪った32歳のストライカーは、今のローマで一番大事なカギを握っている。チームメイトが血走った目で守備に走り続けられるのは、奪ったボールをシンプルに前線に送れば、彼が高い確率で自分たちの時間を作ってくれることを知っているからだろう。

 192センチの長身ながら、パワーだけでなく技術も光る。その強くてしなやかな動きは、後半に追加点をもたらした。

 後半12分にまたしても浮き球を追って裏に抜け出すと、ジェコをマークするジェラール・ピケがエリア内でたまらずファウル。第1戦でオウンゴールを決めてしまったデ・ロッシがボールを託され、ペナルティスポットからゴール裏のティフォージ(イタリアの熱狂的なサッカーファン)を目がけるように強い弾道を突き刺し、準決勝進出にあと1点と迫った。