レアルとバイエルン。4強「常連さん」の戦術をCL研究家3人が説く (6ページ目)

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中山 最終的にはアウェーゴール2つを持っていて、引き分け以上で勝ち上がれるという余裕が、バイエルンを勝利に導いたと思います。それと、最近のバイエルンの試合を見て感じるのは、リベリーの充実ぶりです。彼は精神的に安定している時に桁違いのパフォーマンスを発揮する傾向があるので、おそらく現在はハインケス監督との関係がうまくいっていることの証だと思います。

 また、バイエルンではジェローム・ボアテングとマッツ・フンメルスのCBコンビによるロングフィードからの展開が際立っていました。セビージャはある程度細かくつないで展開したいのですが、バイエルンはセビージャのその狙いをかわすかのように、最終ラインから一発でサイドチェンジしたり、前線に決定的なパスを供給します。おそらくベスト4に残ったチームの中で、間違いなくバイエルンがストロングポイントにできる部分が、この両CBのフィード力ではないでしょうか。

小澤 バイエルンのCB2人は守備も堅い。セビージャがあれだけチャンスを作っても、最終的にフィニッシュする場面では楽にシュートを打たせてくれません。第2戦は、セビージャの枠内シュートがゼロでしたから。

 結局、セビージャはバイエルンに構えられてしまうと、アタッキングゾーンまでは侵入できてもフィニッシュのところ、中央のエリアで個人の力でシュートまで持っていけるレベルの選手がいないというのが苦しかったです。

 クラブ史上最高額で獲得したルイス・ムリエルにしても、バイエルンの守備陣を前にした時は、そこまでのレベルにないことを露呈していました。マンチェスター・ユナイテッド戦で活躍したベン・イェデルにしてもこのレベルの試合、相手になると毎試合違いを作る働きはできません。クラブの規模という点においては、まだセビージャはチャンピオンズリーグの8強の常連になるレベルではないのでしょう。

倉敷 今シーズン、セビージャは優秀なスポーツディレクターのモンチを失ったわけですが、後任のスポーツディレクターの評価はいかがでしょうか?

小澤 オスカル・アリアスは今季開幕前、そして冬も多くの選手を獲得しましたが、まだ"当たった"と呼べる選手はいません。アリアスが獲得した新戦力でレギュラーはバネガ、ヘスス・ナバスあたりですが、彼らは出戻り組です。もちろん、マンチェスター・ユナイテッドを倒してベスト8まで勝ち上がったので批判は回避できていますが、セビジスタの不満はたまっています。

倉敷 国内リーグで振るわず、来シーズンのチャンピオンズリーグ出場は難しい状況のセビージャですが、ヨーロッパリーグの可能性はまだある。今季は途中就任だったモンテッラ監督も欧州の舞台で戦える人だとわかった。来季はどんなチームを作るのか楽しみです。

 では、次回は準決勝のバイエルン対レアル・マドリーを展望します。

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