バルサ、シティの「番狂わせ敗退」を
CL博士3人が論理的に読み解く

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小澤 ラ・リーガをずっと見ている身からすると、疑問が残る采配でした。サイドバックとしての適性も含めて、スピードのないラポルテをサラーにぶつけるという発想自体が理解できません。同じく本職ではないとはいえ、サブにはオレクサンドル・ジンチェンコもファビアン・デルフもいましたから。

 確かにボール保持局面でのビルドアップでラポルテの左足のフィードを活用する狙いはわかりますが、リバプールのカウンターは最も警戒すべき点でしたから、これはペップ(・グアルディオラ監督)の大きな采配ミスだったと思います。

 おそらくペップは、イルカイ・ギュンドアンが右サイドから中央に入って、右サイドバックのカイル・ウォーカーを前に上げて、4バックのかたちをとりながらもビルドアップ時には3バックに変形してボールの保持から前進を図ろうと考えたのでしょう。ところが開始12分で失点してしまうと、その流れのまま失点を続けてしまった。

 そんな中、ひとつでもアウェーゴールを奪いたいはずのペップは、ハーフタイムに交代カードを切りませんでした。そこも含めて、ペップにしては珍しく後手を踏んだという印象を受けました。

倉敷 かつてバイエルンを率いていたペップはドルトムントにいたユルゲン・クロップを大変苦手としていましたが、その原因を中山さんはどう分析していますか、それは今回も影響したでしょうか?

中山 ペップは相手陣内でボールを保持したいと考えていて、対するクロップはなるべく高い位置でボールを奪ってからの素早い攻撃に特徴があります。そんな中でどちらも高いプライドを持って「攻撃的サッカー」を標榜しているわけですが、そうなると嚙み合わせとしてクロップのスタイルの方が有利ですよね。シティは前に人数をかけるので、リバプールに速攻を仕掛けられた時に後ろの人数が足りず、カウンターの餌食になりやすいですから。

 特に現在のリバプールはサラーとサディオ・マネというスピードと決定力を兼ね備えた強力な両ウイングを揃えているので、お互いのスタイルを貫いて戦った場合、どうしてもペップがやられる確率が高くなってしまいます。

 ただ、僕がこの試合で注目したいのは、後半のリバプールの守備でした。アウェーゴールを狙って攻撃的に戦うシティに対して、前からプレッシャーをかけて守るのではなく、わりと低い位置に人数をかけてゴール前のスペースを閉じて守ることができていました。これは今シーズンのリバプールが成長した点だと思いますし、クロップという指導者がドルトムント時代から進化している部分ではないでしょうか。

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