ペップ戦術が「プレミア肉弾戦」を凌駕。マンチェスター・Cが独走V (2ページ目)

  • 田嶋コウスケ●文 text by Tajima Kosuke
  • photo by AFLO

 しかも、「プレミアで頂点に立つにはフィジカルが足りない」とのG・ネビルの指摘も跳ね飛ばした。

 今季マンチェスター・Cの平均身長は177cmでリーグ最小。193cmのヴァンサン・コンパニや188cmのジョン・ストーンズに加え、183cmと高さこそあまりないが体幹の強いニコラス・オタメンディといったセンターバックには屈強な選手が揃っている。しかし、中盤の底を務めるフェルナンジーニョ(177cm)をはじめ、中盤から前線は小柄な選手ばかりだ。それでも、フィジカルとスピードに重きを置くイングランドを制した。

 また、「異次元」(英紙『タイムズ』)と賞賛された1試合平均のボールポゼッション率は、リーグトップとなる71.22%を記録。2位アーセナルの62.43%、3位トッテナム・ホットスパーの61.5%を大きく引き離している。

 つまり、G・ネビルの指摘を踏まえたうえで言えば、これまでのプレミアリーグの成功法則とは異なるアプローチで、グアルディオラ監督はイングランドの頂点に立ったことになる。

 では、成功の秘訣はいったいどこにあったのか──。

 主たる要因は、「ポジショナルプレー(ボールの位置によって、優位性を保つために流動的にポジションを取る考え方)」など、イングランドでもまだ完全には浸透していない「新たな概念」を持ち込んだことにある。実際、グアルディオラ監督はトレーニングでピッチを20分割してラインを引き、選手がどのゾーンにいるかの意識づけを徹底させた。

 こうしたコンセプトを就任1年目の昨シーズンから導入したが、「サッカーIQの低さ」が指摘される英系選手を中心に、戦術浸透には時間がかかった。アルゼンチン代表DFのオタメンディも「監督がチームに新しいアイデアを持ち込んだ。だから1年目はメソッドを理解するのに苦労した」と明かす。それゆえ、昨シーズンのプレーぶりはどこか中途半端な印象が拭えなかった。

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