2018.03.12

ホームを失った流浪のクラブ、
シャフタールの欧州CL8強入りなるか

  • 井川洋一●文text by Igawa Yoichi
  • photo by Getty Images

 今季のチャンピオンズリーグ(CL)16強の中で唯一、シャフタール・ドネツクだけが自らの本拠地でホームゲームを戦うことができていない。

CLラウンド16第1戦のローマ戦を2-1で勝利したシャフタール 彼らのホームタウン、ウクライナのドネツクにあるドンバス・アリーナは、総工費400億円以上をかけて建設され、2009年8月にオープン。EURO2012で5試合を開催したUEFA公認の5スタースタジアムは、ガラス張りの壮麗な外観を誇り、歴史的な公園に鎮座する”宝石”と呼ばれていた。

 しかし3年ほど前から、そこには違う景色が広がっている。

 2014年に親ロシア派が起こした内戦の影響により、数度の砲撃を受けたスタジアムは閉鎖を余儀なくされた。ドネツクを含むウクライナ東部は分離主義者たちに支配され、チームは拠点をキエフに移し、ホームゲームはリビウで行なわれるようになった(2016-17シーズンの途中からハリコフへ)。

 2003年からシャフタールに所属し、主将を務める元クロアチア代表のダリヨ・スルナは、「その日のことはよく覚えているよ」と2016年に英『ガーディアン』紙に語っている。

「あれは2014年5月16日だった。僕らはすぐにそこを離れるように言われたんだ。自宅から荷物を持ち帰る時間もなく」

 クラブと選手たちは、家、練習場、ホームスタジアム、そしてファンを失い、それまで5連覇していたリーグ王者の地位からも陥落。翌シーズンもライバルのディナモ・キエフに連覇を許した。

 その後、ミルチェア・ルチェスク監督の12年にわたる長期政権に終止符が打たれ、後任のパウロ・フォンセカ監督のもとで復権を果たす。昨季、3年ぶりに玉座に返り咲くと、今季はCLに本戦から出場することになったのだが……。

 昨年9月にスルナに禁止薬物の使用が発覚。本人は意図的ではなかったことを主張したが、後に今年8月までの出場停止が決定した。流浪を強いられているクラブはキャプテンまで失う苦境に陥った。