2018.02.08

森岡亮太、新天地のアンデルレヒトでも
1980年代の香り漂うプレー

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

 移籍市場が幕を下ろしたベルギーリーグ第25節。森岡の去ったベフェレンが2-1でアントワープから勝利を奪うと、ベルギーの全国紙は「森岡がいなくなってもなお、ベフェレンはやっていける」という見出しをつけた。その何気ないタイトルに、ベフェレンにおける森岡の存在感の大きさを感じた。

 一方、新天地のアンデルレヒトで森岡は、「勝利を義務づけられたクラブでいかに活躍するか」という新たな命題に挑むことになった。

 ベフェレンではスター選手として皆から愛され、ゴールやアシストといった得点に直結するプレーさえすれば、加点方式で高く評価された。しかし、アンデルレヒトでは結果を残せないと、露骨なまでの減点方式で酷評されてしまう。

 まさに、アンデルレヒトでのデビューマッチを2-2で引き分けたメヘレン戦がそうだった。すばらしいアシストを記録したにもかかわらず、勝ち越しPKを失敗した森岡に対し、全国紙『ヘット・ニーウスラブット』は「4」という厳しい採点をつけたのだ。

 サポーターも、また厳しい。

 10分に森岡のアシストからFWシルベール・ガンボウラが先制弾を決めたものの、あっという間にメヘレンに逆転されるとスタジアムはネガティブな空気に覆われ、27分にはミスパスをした森岡に「しっかりしろ!」と言わんばかりの「ピー」という非難の口笛が飛んだ。ライバルチームのクラブ・ブルージュと比べても、アンデルレヒトのサポーターはブーイングのタイミングがとても早い。

 名門チームならではの要求レベルの高さで、森岡のアシストは試合翌朝の新聞では霞んでしまった。だが、私には森岡の魅力がいっぱい詰まったシーンだったと思う。

「ボールを受ける前に首を振って周囲の状況を確かめろ」とはよく言われることだが、マーカーと全力で並走し、縦パスを追いながら首を振るのはそう簡単なことではない。

 しかし、森岡はゴールライン際でボールに追いつく前にペナルティエリアのなかの状況を完全に把握し、ノールックで正確なクロスをガンボウラの頭に合わせたのだ。森岡の左足によるキックテクニックもすばらしかったが、状況把握能力もまたすごかった。