「点の獲り方がわからない」久保裕也。エゴ優先のチームでスランプに (2ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • 川森睦朗●撮影 photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 今季6ゴールを決めている久保だが、今年に入ってからはノーゴール。昨年も含めると6試合連続で無得点と、久保は今季2度目のスランプに入ってしまった。

「少ないチャンスで自分がどうにかして持っていって、点を獲るしかない。今は点の獲り方がわからないです」とまで彼は言うのである。

 ここ3試合、記者席から見ていて「あ、惜しかったな」と思えた久保のシュートは、アントワープ戦の87分。パンチの効いた左足のミドルシュートで相手GKシナン・ボラトを脅(おびや)かした場面だけだった。

 けっして久保がコンディションを崩しているわけではない。アントワープ戦では80分、不運にもオフェンスファウルを取られしまったものの、190cmの巨漢MFサンブ・ヤタバレとの激しいデュエルに勝ち、左サイドライン際を強引に抜け出した。さらに試合終了直前には自陣に向かってスプリントし、フリーになりかけた敵に対して読みよく身体を入れてピンチを未然に防いだ。また、敵陣の深い場所でも粘り強くプレスをかけて、ボールを奪い返していた。

 開幕時に陥った今季最初のスランプは、昨季からの疲労を持ち越してしまったことと、ひざの負傷が重なったことから生じた。当時の久保は決定機が訪れてもフィニッシュで精度を欠いてしまい、開幕から6試合ノーゴール。5戦目と6戦目はベンチスタートとなる。

 そんな彼を救ったのが、第7節のオーステンデ戦で決めた"ごっつぁんゴール"だった。後に「あれは大きかったですね」と振り返ったシンプルなゴールは『スシボンバー復活』の呼び水となり、シャルルロワ戦(10月27日)とムスクロン戦(11月24日)で単独突破からのスーパーゴールを生んだ。

 今の久保は、当時とは違った質のスランプに陥っている。アントワープ戦の後半、久保は相手の密着マークにあいながらボールをしっかりとキープし、味方にパスを叩いてフリーランの動きをし続け、パスミスもゼロだった。しかし、久保がゴール前に走り込んでも左右からクロスは来ず、中盤からもスルーパスが出てこない。さらに、クラブ・ブルージュ戦での久保はシュートゼロに終わった。

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