冷遇から脱出した原口元気。
あえて2部デュッセルドルフを選んだ理由

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko photo by Getty Images

 長い苦しみの末、原口元気がようやく新天地を見つけ出した。ドイツ2部のフォルトゥナ・デュッセルドルフに期限付き移籍で加入。発表翌日のエルツゲビルゲ・アウエ戦でさっそく62分から途中出場し、得点こそなかったものの、はつらつとしたプレーを見せた。

新天地デュッセルドルフでデビューを果たした原口元気新天地デュッセルドルフでデビューを果たした原口元気

「久しぶりに公式戦に出たので、楽しかったです」と、本人も安堵しているように見えた。本当にやっとスタートラインに立てたのだ。

 原口がヘルタ・ベルリンからの移籍をほのめかし始めたのは2016~17シーズンのことだった。もちろん、個人的な願望としては、それ以前からあっただろう。プレミアリーグへの憧れを口にすることもあったし、「もっと自分のプレースタイルにあった場所を探さなくては」と、はばかることなく話していた。

 一方で、そのシーズンの後半になると、ヘルタからは契約延長を求められるようになった。原口のヘルタとの契約は2018年夏まで。それ以降の契約をしたいと、クラブは迫ってきた。契約延長をすれば、原口がヘルタを出るにしても移籍金がクラブに残る。

 だが、原口は首を縦に振らなかった。ミヒャエル・プレーツ強化部長は機嫌を損ね、ドイツメディアに「原口との契約延長はない」などと語った。イングランドからのオファーも噂されたが実現せず、結局、ヘルタに残留して今季をスタートさせた。

 夏のプレシーズンの原口は、失礼ながら"不憫(ふびん)だった"という表現が適当だと思う。パル・ダルダイ監督の息子や、ユースチームから人数合わせで連れてきた選手が練習試合に出場するのをただ見守っていることもあったし、彼らに押し出される形でサイドバックとして起用されることもあった。

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