2018.01.06

弱い代表チーム、国際世論の批判…。
W杯開催国ロシアの狙いは外れた

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 さらにゴルドギエフによれば、プーチンは若い世代に国を意識させる手段としてもワールドカップを利用したがっている。ゴルドギエフによると、ロシアの若い労働者層には国内リーグを見る人が多く、教育程度の高い若者は外国リーグのほうが好きだ。ワールドカップなら、どちらの層も楽しめるだろう。

 しかしワールドカップを最も「楽しむ」ことのできるロシア人は、有力者にコネを持つ建設業界関係者だ。サンクトペテルブルクのスタジアムだけでも、440億ルーブル(現在のレートで約865億円)の建設費がかかっている。当初予測の7倍だ。スタジアムの完成は計画より9年遅れ、北朝鮮から来た労働者を使っても、まだ100%は仕上がっていない。

 プーチンは取り巻きたちの懐を潤す必要がある。その見返りとして、彼はきらびやかな新しいビルをたくさん建てることができる。ボルゴグラードやカリーニングラードといった貧しい開催都市にも、そんなビルが立ち並ぶことになる。

 さらにプーチンは、2016年の欧州選手権フランス大会で大暴れしたロシアのフーリガンをスタジアムから締め出して、治安維持にかかわる自らの力を誇示することができる。欧米から制裁を受けていても大会を開催できたと、胸を張ることもできるだろう。