驚愕のクラシコを分析。スペイン人より詳しい3人がジダンの思惑を語る (4ページ目)

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中山 ジダン監督も、前半を終えた段階では自分の選択を確信できていたと思うんです。バルサはほとんど中盤でボールを保持できず、最終ラインでボールを弾き返すという守備に終始していましたし、ボールを奪った後は中盤を省略して前線に蹴り込むシーンが多かったですしね。わかりやすく言えば、バルサのイメージとはかけ離れたサッカーでした。

 ただ、守備への切り替えがものすごく速くて陣形もコンパクトだった。ペナルティエリア周辺でほとんどスペースを与えていなかったので、マドリーも押し込んだ状態でプレーしていても、それほど決定機を作れなかった印象がありました。

倉敷 僕は、前半に関してはマドリーの"エネルギー"のことがいちばん気になって見ていました。クラブワールドカップの影響でクラシコの準備をする時間が少ない中で、しかもランチタイムキックオフ。相手のよさを消す戦術を使ってうまくいくならそれでいいけれども、前線で点が取れる選手、違いを生み出せる選手を使わないなかで、もし前半ゴールが奪えなかったとすれば、それは相当にマドリーにとっては危ないだろうな、という風に思って見ていました。

 それから、歩いているメッシにマークをつけることの意味というのが、点を取って勝たなければいけないチームにとっていいのだろうか、というのもありましたね。そこはコヴァチッチでなくたって、もっと攻撃力のある選手がメッシを見てもいいわけですから。そういう部分も含めて、後半はバルサが楽に戦えるようになるかもしれないと。それと、マドリーはバルサの右サイド、つまりセルジ・ロベルトのところを狙って攻めていたように見えました。

小澤 マドリーの狙いは、やや守備力の低い右SBセルジ・ロベルトのスペースにあったと思いますし、ベンチサイドでジダン監督がボールを持ったサイドバックに早めに縦に入れろというジェスチャーをしている場面を何度か見ました。

 実際、マドリーは4ー4ー2のバルサの中盤がひし形でSBがボールを持った時にプレッシャーがかかりにくい構造をうまく活かしてカルバハル、マルセロをボール保持の起点としていました。普段のマドリーはビルドアップの局面で両SBがかなり高い位置を取って彼らが空けたスペースにトニ・クロース、ルカ・モドリッチのMFが入って起点を作るのですが、今のバルサとのマッチアップではポジショニングでズレを作るまでもなくSBがフリーになります。

 SBがボールを持つとバルサは基本的にラキティッチ、イニエスタのMFが対応しますが、セルジ・ロベルト、ジョルディ・アルバのSBもカバーリングのために少しポジションを上げていました。そのタイミングを狙ってクリスティアーノが中から左に流れてボールを受けるシーンが多かったですし、右サイドはベンゼマ、モドリッチ、コヴァチッチが何度か流れていくシーンもありました。その辺は意図的な狙いだったと思います。

 ただ、その後の工夫が足りなかった。クロスを入れるまでに時間もかかっていましたし、クロスを入れるポイントもよくなかった。バルサがクロス対応として素早くゴール前に人数をかけてきたというのもありましたが、ジダン監督はサイドを攻略してからのクロス攻撃まで詰めていなかったように見えました。

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