街のアイドル・乾貴士。歴史的2ゴールでエイバル市民を幸せにする (2ページ目)

  • 山本孔一●文 text by Yamamoto Koichi photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 9分後、エイバルが追加点を決める。その起点となったのも乾だった。左サイドでボールを受けた乾は、オーバラップしてくるホセ・アンヘル・"コテ"を確認すると、ボールをキープしながら絶妙なタイミングでヒールパスを出す。エイバルの左サイドバックがダイレクトでクロスを上げると、シャルレスが完璧なヘディングシュートを決めた。再び歓喜の渦に巻き込まれたイプルアだったが、乾が見せたヒールパスの時点で、スタンドにはすでに大きなどよめきが起きていた。

 そして54分、乾はスペインサッカーの歴史に永遠にその名を刻む。

 キケ・ガルシアの放ったシュートは一旦GKに弾かれた。だが、「しっかりとゴール前に詰めることが得点につながる」という岡崎慎司のアドバイスを守ってゴール前に詰めていた乾の前にボールは転がり、これを難なく無人のゴールへと押し込んだ。昨シーズン最終節のバルセロナ戦以来の1試合2得点。そしてこのゴールはリーガの通算7万点目であり、クラブ史上最多となるリーグ戦無敗試合の記録を6に伸ばすことを確定的にするゴールでもあった。

 キケ・ガルシアに向かって走り、おぶさった乾は、両手を上げベンチに向かって指を差した。その時は誰に向けてのものだったかわからなかったが、試合後のミックスゾーンで、乾は誰に捧げたものかを笑いながら教えてくれた。

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