警告のラッパは7度鳴る。イタリアに見る、
W杯予選「地獄の黙示録」

  • 利根川晶子●文 text by Tonegawa Akiko photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 イタリアサッカーの「終末」。それはなにも今ここで始まったわけではない。黙示録によると、「終末」の前には7度ラッパが鳴らされるというが、警鐘はすでに何度も打ち鳴らされてきた。実際に、2010年、2014年のW杯本大会でも、イタリアはグループリーグで敗退していた。

 優秀な選手が育たないのは、明らかにイタリアサッカーを取り巻く状況に原因がある。イタリアにはイタリア人選手を育てる場所がないからだ。確かに優秀な選手を安価で手に入れるための手段として、若手育成への関心は数年前から高まってはいる。例えば、インテルなどは多額の資金をユースチームに投入し、年代別の大会で優勝を果たした。

 しかし、トップチームの主要選手がほとんど外国人であれば、イタリア人選手の育成は無意味だ。たとえ優秀な選手が育ってきたとしても、今のイタリアのクラブチームにはイタリア人の居場所がない。いわゆるビッグチームと言われるクラブは外国人だらけだ。それでもクラブチームは、イタリアサッカーの将来よりも、今の勝利を重視する。

 もちろん、こうした状況に危機感を抱いている者はいる。前イタリア代表監督のアントニオ・コンテは、どうにかクラブチームのやり方を変えようとしたが、それが不可能であることを知り、ベンチを去った。ほかにも多くの監督やマスコミが警鐘を鳴らしていたが、それでもイタリアの改革は遅々として進まない。何十年も前の地震で崩れた家が、そのままの姿で残っているのと同じだ。

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