バルサは「国家の代理」。カタルーニャ独立運動で示した巨大な影響力

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】カタルーニャ独立とバルサ(前編)

 空っぽのカンプノウに、ボールの音だけが虚しく響く──。スペイン・カタルーニャ自治州で独立の是非を問う住民投票が実施された日曜日、FCバルセロナがラス・パルマスを本拠に迎えた試合は無観客で行なわれた。治安部隊による投票妨害で市民に多数の負傷者が出たことに対するバルサの抗議の表れだったが、同時にこのクラブの計り知れない存在の大きさを示す光景でもあった。カタルーニャの人々にとって、バルサとは何なのか。

無観客で行なわれたバルセロナ対ラス・パルマス戦でプレーするリオネル・メッシ(photo by Getty Images)無観客で行なわれたバルセロナ対ラス・パルマス戦でプレーするリオネル・メッシ(photo by Getty Images)「投票しないという選択肢はない」

 FCバルセロナの主将と監督を務めたジョゼップ・グアルディオラ(現マンチェスター・シティ監督)は、6月にバルセロナで行なわれたデモに加わり、約4万人の参加者を前にこう宣言した。

 世界で最も人気のあるスポーツチームのひとつであり、スペイン・カタルーニャ自治州を代表する組織ともいえるFCバルセロナは、カタルーニャ独立の是非を問う10月1日の住民投票の実施を支持すると明らかにしていた。

 カタルーニャの人々が独立を選ぶかどうかについては中立な立場をとると、バルサは明言した。だがグアルディオラと同じく、バルサも1点だけ強く主張していたことがある。

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