プレミアで最安値のチケット。誰もがハダースフィールドを愛している (6ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 ひとりが言った。「この10年ほどの間に、みんな町に帰ってきた。もう引退して、時間もたっぷりある」

 ディーン・ホイル会長が99ポンド(約1万4000円)のシーズンチケットを売り出したことも、彼らの再会を後押しした。ファン歴の長い彼らは、今季プレミアリーグで戦うハダースフィールドをこの価格で見るはずだ。ここ数十年間のイングランドのトップリーグでは、おそらく最も安いチケットだろう。

 4人はフットボールの大ファンというわけではない。試合よりもクラブそのもののほうに関心があった。彼らはハダースフィールドを2部のクラブとして受け入れ、チャンピオンシップがふさわしい居場所だと思っていた。

 もちろん、プレミアリーグに昇格したことを喜んではいる。でもそれが、クラブの物語のクライマックスではない。どうしても必要なものというわけではなかった。

 ハダースフィールドをサポートすることは......と、グリン・ロバーツが言った。「どちらかと言えば、がっかりする経験が増えるということ。それに、こういう連中との友情が生まれるということ。だから、私らは一緒にいるんだと思う」

 4人はレディングとの昇格プレーオフ決勝を見て、「くたくたになった」。その後、おなじみのパブ「キングズ・クロス」で飲んだシャンパンは最高だった。

 彼らにとっては、栄光がすべてではない。

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