2部で5位からプレミアへ。
ハダースフィールドの夢を支える無名選手

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper  森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 ホイルは「自分より資金力があって、クラブのことを真剣に考える人物」がいれば、クラブを売ってもいいと認める。しかし「これから最高のシーズンを迎えるっていうのに、クラブを売りたがるバカがどこにいる?」と、ホイルは言う。「ハダースフィールドの青と白のストライプをプレミアリーグで見るのは、夢のようなことだし、忘れられない思い出になる。今シーズンは降格候補の一番手という評価だろうが、昨シーズンも(チャンピオンシップで)そう言われていた」

[選手]

 2月5日、ミヒャエル・ヘフェレはハダースフィールドの人気者になった。まず彼は、リーズ・ユナイテッド戦で試合終了直前に決勝ゴールをあげた。2つめは、おそらくもっと重要なことだ。このドイツ人センターバックは試合後の生放送のテレビインタビューに答えて、「なんともファッキングな夢だ」と言ってしまったのだ。

 インタビュアーは「インタビューでそういう言葉を使ってはいけないんですよ」と言ってヘフェレをさえぎり、視聴者に謝罪した。

 ヘフェレは恥ずかしかった。「ダービーの終了間際に決勝ゴールを決めたんだ。イングランドに来たときからの目標だったマン・オブ・ザ・マッチにも選ばれた。だからドイツ語でいう "verdammter Traum"(クソみたいな夢、転じて最高の夢というニュアンス)だと言いたかった。ファッキングという言葉を使ってはいけないなんて知らなかった。インタビュアーに冷たくされたときは、泣きそうだった」

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