松井大輔が考えるサッカーの引き際。
「最後はフランスで終わりたい」

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • 田中亘●撮影 photo by Tanaka Wataru

──当然ジュビロでプレーするよりも環境は悪いでしょうし、年棒も下がると思いますが、そういう部分は気にしてないんですか?

「決断したからには、やるしかない。そういう気持ちです。とにかく前に進むしかないですからね。僕としては、今回の移籍が失敗したとしてもそれでいいと思っているんです。人間には何かに挑戦するという姿勢がいつも必要だと思うし、僕はこれまでもたくさん挫折をして、たくさん壁にぶち当たってきました。でも、そんなのは時間が経てば違った状況になっているものだし、それが自分らしいというか、自分の生き方だと思ってます」

──確かにこれまで何度も壁にぶち当たって、その度にその壁を乗り越えてきた。だからこそ、現在があるわけですね。

「ええ。やっぱり困難を楽しむことが大切なんだと思います。それに、苦痛なことがあっても、考え方ひとつで状況は変わると思うんです。たとえば電球がつかなかったら、ローソクを立てればいい。そういう不便さをいかに楽しめるかが大事。人生は苦い思い出ほど記憶に残るものだから、自分がおじいさんになった時に孫に話せる思い出話が増えるということ(笑)。そういう"ネタ"が増えるということは、その人の人生経験が豊富だということになる。将来的なことを考えても、僕はそのほうがいい人生だと思うんです」

──そう言えば、ル・マンに移籍した時もリーグドゥ(2部リーグ)で、ジュビロに移籍した時もJ2。で、今回のオドラもポーランド2部リーグですね。

「特に狙ってやってるわけではないですよ(笑)。でも、ル・マンの時もジュビロの時も、自分が変われる環境があるというのは共通していて、それは自分にとってもいいことだなって。そういう環境に飛び込めば、自分が変わらざるを得ないじゃないですか。もしジュビロに移籍しなければ、おそらくキャプテンを経験することもなかった。自分よりチームを優先することをそれまで考えていなかった自分に、そういった責任感を芽生えさせてくれたのはジュビロだから、そういう意味でもジュビロには感謝しています。またポーランドに行って何を学ぶのか分からないですけど、それが生きるうえでの力強い武器になってくれればいいと思っています」

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