セビージャにガッポリ稼がせた敏腕SDモンチが、新天地ローマに降臨 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Getty Images

「モンチが太鼓判を押した選手なら間違いない」

 そう言われるほど、セビージャからオファーがあるだけで選手は「保証書付き」になった。

 セビージャのスカウトは20人近くが活動。日々情報を共有し、複数の代理人と連携を取り合う。毎週のように欧州各国リーグのベスト11を選び、その中で気になった選手を最低でも7人がリサーチ。そこで上位8~10人に絞って、それぞれがA~Eの5段階で評価する。例えばAならば「即、契約に動くべき」、Cなら「継続」。多くの目で淘汰することでミスを最小限にし、最終的に"慧眼(けいがん)"モンチが判断していた。

 もちろんモンチとて神ではない。弘法も筆の誤りというべきか、活躍を果たせなかった選手も少なくない。2割程度の契約選手が、鳴かず飛ばずのままでチームを退団している。モンチの失敗例のひとつは、2012年1月にポルトガル1部リーグのマリティモから350万ユーロ(約4億5000万円)で獲得したセネガル人FWババ・ディアワラだろう。

 モンチはババを「フレデリック・カヌーテの再来」と絶賛して迎えた。カヌーテはセビージャで活躍したマリ代表FW。長身でポストワークに長け、貴重なゴールを量産した。つまり、エースの後継者として指名したのだ。

 2009年、筆者はマリティモ時代のババを取材したが、一瞬でマーカーを置き去りにするスプリント力は、周りを圧倒するものがあった。トップスピードでボールをゴールに叩き込む能力も高かったと言える。しかし、運動能力だけで相手を出し抜いている印象で、そこを駆け引きしてくる相手に対しては未知数だった。

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