本田圭佑の肺も肥大化するのか。異才を生むメキシコサッカー事情 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Getty Images

 際だったスタイルを確立するのは理由がある。

メキシコリーグのトップ選手は「月給20万ドル(約2200万円)を稼ぐ」と言われる。つまり、無理をして欧州に渡る必要はない。ステイタスも高く、アステカのような巨大なスタジアムが満員になる。国内のサッカー人気のおかげで欧州による青田買いを防ぎ、時間をじっくりかけて、メキシコならではのスタイルを育むことになった。

 メキシコ人選手は育成段階から高地合宿を張るという。標高3000メートル以上の高地であぜ道を走り込む。時間をかけて体を慣らし、肺に空気を貯められるようにすることで、強度の高い試合でもプレー精度を落とさないようになる。ハイプレスは、メキシコサッカーのひとつの代名詞と言えるだろう。「4つの肺を持つ」とも言われる心肺能力は、大きなアドバンテージなのだ。

 もっとも走力はその特長の一端に過ぎない。プレーの発想の豊かさこそが、この国のサッカーを支えているのだ。

 その点、本田にとって戦いやすい環境と言えるかもしれない。ミランで10番を背負ったMFは、スピードに欠けるものの、テンポを替えるパスや時間を作るようなドリブルでは達人の域に入っている。また、空気が薄いことで抵抗が少ないため、ボールスピードが速くなる。本田が得意とするFKや左足シュートは、本人の適応次第で、大きなアドバンテージを得られるはずだ。

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