断られた過去、古巣の仇。柴崎岳のヘタフェ移籍にまつわる不思議な縁 (3ページ目)

  • 山本孔一●文 text by Yamamoto Koichi photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 メディアからの注目度は決して高くはない。番記者の数は2大チームの半分以下。新聞紙面に関しても特別に用意されたページはなく、今回の移籍や試合などについても少し触れる程度だ。サポーターもマドリードの2強のどちらかと掛け持ちをしている者が多く、アンヘル・トーレス会長自身もレアル・マドリードのソシオ(クラブ会員)であり、虎視眈々と世界一のクラブの会長の座を狙っているとも言われているぐらいだ。

 だからこそ、選手や監督には余計なプレッシャーがかかることはなく、これまでヘタフェでステップアップしてビッグクラブへ飛躍した選手や監督がたくさん生まれてきた。現役ではアトレティコ・マドリードのガビ、ビジャレアルのソルダードやバルセロナのパコ・アルカセルらがその代表格となる選手であり、監督もキケ・サンチェス・フローレス、ベルント・シュスター、ミカエル・ラウドルップ、ミチェルなどが、このマドリードの小さなクラブで経験を積んできた。

 断られた過去、古巣の宿敵となったチーム......今回の柴崎のヘタフェへの移籍からは、"めぐり合わせ"という言葉が頭に浮かぶ。ともかく、ヘタフェという列車に日本人は乗り込み、リーガを旅することを決めた。その行き先に何が待ち受けているのかは、まだ出発していない今は占うことはできない。だが、柴崎がまだ見たことのない風景や体験がヘタフェにあるのは間違いない。

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