ドイツの若さ、チリの本気。
コンフェデ決勝は勝者も敗者も美しかった

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

 挑発あり、エルボーあり、乱闘あり......。コンフェデ杯の決勝戦は、まるでコパ・アメリカのような南米っぽいテンションの高さだった。ドイツはしたたかにカウンターの一発を狙い、チリを後退させながら時間を有効に使った。そしてアディショナルタイム、サンチェスが蹴った渾身のフリーキックがGKマルク=アンドレ・テア・シュテーゲン(バルセロナ)にビッグセーブされたところでタイムアップ。若きドイツBチームがコンフェデ杯の頂点を掴み取った。

 優勝への渇望が強かったからこそだろう、試合後にチリの選手はピッチの上に次々と崩れ落ちた。だが、その後は試合中のわだかまりもすっかり捨てて、「グッドルーザー」としてドイツを祝福する。そんな彼らに、観客席からは「チーレ! チーレ!」の大声援が送られた。

 決勝ゴールにつながる致命的なミスを犯したMFマルセロ・ディアス(セルタ)は試合後、チリ国民に対して謝罪文を発表した。およそ14年前、兄弟のひとりを亡くしたのがこれまでの人生でもっともつらいことだったとすれば、今日のヘマは自分のサッカー人生で一番厳しいもの。泣きたい、叫びたい、苦しい気分だ。申し訳ない......。この長い謝罪文は最後、「このミスの借りは、遅かれ早かれ返してみせる」と締めくくれられている。コンフェデ杯へ懸けたチリ人たちの想いの強さが伝わってきた。

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