新たなPK戦「ABBA(アバ)方式」で
先攻有利は改善できるのか?

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • photo by Getty Images

 なぜ2本目で失敗が起きやすいのか。その理由はひとつではないだろうが、最大の理由として、"GKの慣れ"が考えられる。

 同一チームが2本連続で蹴ると言っても、当然キッカーは入れ替わる。そのため、キッカー自身にとっては1本目のPKだ。しかし、GKは立て続けに2本のPKに臨むため、心身ともにほぐれた状態で2本目に臨めるのではないだろうか。実際、現場でこの様子を見ていても、連続2本目に臨むGKには心なしか、いくらかの余裕や落ち着きが感じられた。

 やはり、この新PK方式では1本ごとに先攻後攻を入れ替える結果、「同一チームが2本連続で蹴ることになる」という点が、キモだと言っていいだろう。従来のPK方式では1人目と5人目にPKが得意な強心臓の選手を置くのが定石だったが、新方式では、1本目が先攻なら3、5人目、1本目が後攻なら2、4人目が重要になってくる。

 では、新PK方式は本当に先攻後攻の公平化に有効なのか。この最も重要な問題について、以上の検証を踏まえて結論を出してみたい。

 実際に新PK方式を体験したチームの監督に話を聞いてみると、実に3試合すべてのPK戦に関わったウルグアイのファビアン・コイト監督は、「いいアイディアだ。とてもフェアなやり方だと思う」。だが、その一方で、イタリアのアルベリコ・エヴァーニ監督は、「何かが大きく変わるわけではない。たいした違いはない」。両者は対照的な意見だったわけだが、ここまで見てきた検証結果で言えば、エヴァーニ監督が言うように、たいした違いはなく、先攻有利は変わらないのではないか、というのが、ここでの結論だ。

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