試合後は声がガラガラ。情熱家・コンテ監督がチェルシーを戴冠に導く (2ページ目)

  • 田嶋コウスケ●取材・文 text by Tajima Kosuke
  • photo by AFLO

 とはいえ、シーズン序盤は苦戦を強いられた。開幕当初は守備に隙が散見され、第6節までに9失点を献上。第5節リバプール戦(1−2)と第6節アーセナル戦(0−3)で連敗すると、英メディアではコンテ監督の解任論さえ浮上した。すると、イタリア人指揮官は第7節のハル・シティ戦から、それまでの4−1−4−1から3−4−2−1へシステムを変更。この3バックへの移行が吉と出た。

 足かせだったディフェンスはここから著しく改善し、6試合連続のクリーンシート(無失点試合)を達成。怒濤の13連勝で白星を積み上げていった。「今季のターニングポイントをひとつ」と問われれば、間違いなくこの3−4−2−1へのシステム変更になる。

 こうしたコンテの「戦術的柔軟性」が、既存戦力の持ち味を最大限まで引き出したことも優勝の一因だ。もっとも恩恵を受けたのは、ベルギー代表MFのエデン・アザールだろう。これまでは左サイドMFとしてタッチライン近くでプレーすることが多かったが、3−4−2−1の「2」の位置に入ると、より中央の位置でボールを受けられるようになった。

 加速力抜群のドリブル、切れ味鋭いワンツー突破、カットインからのミドルシュートを得意とするアザールは、この戦術変更で水を得た魚のように輝きが増した。理由は、中央に移動したことで味方選手との距離が近づき、プレーの選択肢が増えたこと。センターフォワードのジエゴ・コスタと良質のコンビネーションを奏でながら、チーム2位の15ゴールを挙げた。モウリーニョ前政権時代は低迷していたエースが、見違えるように息を吹き返したのは大きかった。

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